Column
2025年12月17日
画像はすべて © HOANG SON
ダナン市とその周辺には、ミーソン遺跡やホイアン旧市街など、世界的にも価値の高い文化遺産が数多くあります。これまで遺産の保存は、修復や立ち入り制限といった「守る」ことが主でしたが、近年は「どう生かすか」が大きなテーマになっています。その答えとして注目されているのが、デジタル技術の活用です。
ミーソン遺跡では、寺院群や遺物を細部まで立体的に記録する作業が進められています。建物や彫刻をスキャンし、形や傷、傾きまで正確にデータとして残します。これにより、もし将来、台風や地震などで遺跡が損傷した場合でも、元の姿を詳しく確認し、復元に役立てることができます。また、時間の経過による劣化や変形を比べることも可能になります。
集められたデータは、安全に保管されるだけでなく、観光や学習にも活用される予定です。例えば、現地に行けない人でも遺跡を体験できる映像コンテンツや、立体的に遺跡を見られる仕組み、スマートフォンで聞ける音声案内などが計画されています。実際に博物館では、多言語での案内や、自動で説明してくれる仕組みがすでに使われ始めています。
一方で、こうした取り組みはまだ十分とは言えません。遺産ごとにデータの形式が違ったり、体験できる内容が限られていたりする課題もあります。そのためダナン市は、文化遺産全体をまとめて扱える仕組みを整え、観光や地域の活性化につなげようとしています。将来的には、遺跡や祭りの情報を一つの地図で見られたり、自分の興味に合った観光ルートを提案してもらえたりすることも目指されています。
この取り組みの大きな目的は、遺産を単に過去のものとして保存するのではなく、今を生きる人々や次の世代にとって価値ある存在にすることです。デジタル技術を使うことで、遺跡は壊れにくくなり、学びやすくなり、より多くの人とつながることができます。ダナン市は、こうした方法で文化を未来につなげ、地域の魅力と成長につなげようとしています。
この記事が伝えているのは、技術の話そのものではなく、「遺産を守りながら、きちんと使い、次に渡していく」という新しい考え方です。ダナンとミーソンの取り組みは、その具体的な一歩として進んでいます。