Column
2025年11月12日
インドネシア・東ヌサトゥンガラ州のコモド国立公園内にあるパダール島で、大規模なリゾート開発計画が進められています。事業主体はPT Komodo Wildlife Ecotourism(KWE)で、448戸のヴィラを含む自然観光施設の建設を予定しています。
開発許可面積は274.13ヘクタールに及び、これはパダール島の総面積の約19.5%に相当します。法的根拠は、2024年9月に環境林業大臣シティ・ヌルバヤ氏が発布した政令(SK.796/Menhut-I/2014)で、同社に自然観光施設としての運営権が55年間にわたり付与されています。
国立公園事務所によれば、市街地面積は許可面積のうち5.64%にとどまる見込みです。政府はこのプロジェクトを「厳重に監視する」としており、建設開始前には環境影響評価(EIA)の結果をユネスコに報告するとしています。
開発に対しては、地元の住民団体や観光事業者から懸念の声も上がっています。主な懸念は、コモドドラゴンの生息地への影響、地域経済への負担、そして土地利用に関する不公平感です。
PT KWEは環境影響評価(AMDAL)の中で、こうした問題への緩和策を提示しています。施設はコモドドラゴンの移動を妨げないよう高架式構造を採用し、廃棄物管理を徹底して野生動物の行動変化を防ぐ方針です。また、建設中にコモドドラゴンの巣を発見した場合は作業を中止し、国立公園事務所へ報告する手順を設けるとしています。
さらに、地域住民を優先的に雇用する標準業務手順(SOP)を策定し、地域開発や経済的機会を広げる取り組みも予定されています。
パダール島は長年にわたり東ヌサ・トゥンガラ州を象徴する無人島として知られており、コモド国立公園内にある2つのピンクサンドビーチの一つが存在します。観光客に人気の高い日の出・日の入りスポットでもあり、コモド国立公園の中でも特に注目される場所です。
コモド国立公園事務所によると、2024年までにパダール島のコモドドラゴン個体数は31頭となる見込みです。
ユネスコはこの地域の開発について、世界遺産としての顕著な普遍的価値(OUV)を損なう恐れがあるとして慎重な対応を求めています。委員会は「影響評価を十分に実施しないまま開発を承認してはならない」とインドネシア政府に勧告しています。
パダール島の観光開発は、観光振興や地域経済の拡大という利点を持ちながらも、世界遺産としての生態系保全、地域社会との共存といった課題を抱えています。今後、政府、事業者、住民、そしてユネスコの間でどのような調整が進められていくのか、この美しい島の行方が注目されています。
執筆者: Sara Hashimoto
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